総合内科的知識が問われた経験症例 Part4 『胸痛』後編|桜ヶ丘クリニック|兵庫県伊丹市の総合内科・腎/高血圧内科

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総合内科的知識が問われた経験症例 Part4 『胸痛』後編|桜ヶ丘クリニック|兵庫県伊丹市の総合内科・腎/高血圧内科

総合内科的知識が問われた経験症例 Part4 『胸痛』後編

前編の続きで本症例の最終的な診断についてお話ししていきます。

 (5) 左胸水は普通の病気ではない!!

胸に水がたまることを胸水と呼びますが、これは様々な理由で出現します。原因としてよく見られるのは心不全や腎不全,低栄養,肝硬変等が挙げられます。これらの疾患は左右両側に胸水がたまることが多いのですが、少ない時は片側からスタートのこともあります。しかしその場合経験上なぜか右側からのスタートが圧倒的に多いです。

そのため逆に左のみの胸水は常に異常という認識が重要となります。これは医師の中でもあまり浸透していない印象です。左胸水で特に多いのは肺がんの胸膜転移や結核性胸水です。しかしこれらは慢性的な疾患でありまたよほど進まない限り胸痛が出ることも少ないため今回は可能性が低いです。では正体は一体何なのでしょうか?

 

 (6) 左胸水+胸痛→特発性食道破裂(Boerhaave症候群)の可能性

実はこれさえ知っていると今回の症例は一発診断でした。逆に知らないとほぼ答えにたどり着けません。

食道は左胸腔を通って横隔膜を貫いて胃に合流します。そのため何らかの理由で食道が破れると左胸腔に消化液が漏れ出て肺で炎症を起こし胸水が出ます。消化酵素による炎症により胸痛も合併します。そして食道が破れる原因として多いのは飲酒後の激しい嘔吐→食道に大きな圧→食道破裂です。今回の症例とばっちり合いますよね。

決して多くはない疾患ですが極めて危険な命に関わる疾患であるため、患者さんの命を確実に救うためには知識として持っておくに越したことはないですが…食道破裂のような稀な疾患は医師人生で一度出会うか出会わないかなので難しいところですね。。

 

 (7) その後の経過

以上から私としては今回の症例は食道破裂の可能性が高いと判断しました。診断確定のために左胸水を針を刺して抜いてみたところ、アミラーゼという酵素が検出されました。これは唾液の成分であり消化液が漏れ出ている証拠となります。消化器外科に紹介し速やかに手術を行ったところ、事なきを得ました。

 

 (8) 本症例の反省点

やはり患者さんのストーリーを鵜呑みにして無理やり答えを作りださないことです。患者さんの症状から鑑別診断を5-10個程挙げる、そしてそれぞれを吟味して除外診断を行い最終的に1つの診断に絞っていく作業が重要です。決め打ちのように一つの診断に突き進むのはNGです。

そしてもう一つ、やはり過度の飲酒は禁物ですね(汗)。

 

 

以上でPart4を終了します。ここまでご覧いただきありがとうございました。