番外編2では『慢性炎症』が癌の確率をアップさせることをお話しました。
ここからはその慢性炎症が何によって起こるのか、皆さんが癌にならないために特に何に注意したらいいのか、その内容に踏み込んでいきます。
(4) 各臓器のがんと明確な因果関係のあるもの
① 胃がん … ピロリ菌
ピロリ菌は慢性胃炎の原因となります。慢性胃炎により細胞分裂を繰り返すことによって癌化リスクが増えていきます。胃癌とピロリ菌の関係は非常に密接なものであり、胃癌の約98%はピロリ菌によるものと言われております。ピロリ菌を除菌することにより大部分の胃癌を防ぐことができますが、可能な限りお若いうちにされた方がよいです。特に40歳までにピロリ菌除菌をした場合、ほぼ胃癌を0%にできるとも言われております。
② 肝臓がん … B/C型肝炎、アルコール
B型肝炎ウィルスやC型肝炎ウィルスは実は直接人体に対して悪いことはあまりしていません。しかしヒトの免疫がこれらを敵!、と判断して肝臓を背景に激しい戦いを起こします。その結果起こるのが『慢性肝炎』です。この慢性肝炎を繰り返すうちに肝硬変、やがては肝細胞癌に至ります。現在はC型肝炎に対しては非常によく効く薬があるので、検査で引っかかったことがある方は肝硬変になる前に早めに受診しましょう。
対してアルコールは直接肝臓を攻撃するタイプの慢性肝炎です。その後肝細胞癌までに至る経過はウィルス性肝炎と同じですが、大きく異なる点が一つだけあります。アルコール性肝障害は『断酒をすれば改善する』ことです。対してウィルス性肝炎は不可逆的に進行します。なのでアルコール性肝障害を指摘された方は将来肝硬変や肝細胞癌にならないために可能な限り節酒、もしくは断酒をするよう心掛けてほしいです。
③ 子宮頸がん…ヒトパピローマウイルス
毎年10000人もの女性が子宮頸がんと診断され、約2900人が死亡されています。このがんの怖いところは20歳‐30歳代でも罹患する方が非常に多いことです。このがんはヒトパピローマウィルス(以下HPV)による慢性炎症が原因で発症します。20歳~30歳代で発見される子宮頸がんの約80‐90%がHPV16,18型が原因とされています。なぜHPVに感染するのか、それは性交渉によるものです。実は生涯に80%の女性が感染するといわれています。その中で運の悪い方が癌化に至ってしまいます。
胃癌におけるピロリ菌のように除菌できればよいのですが、残念ながらHPVに対する特効薬はありません。
ではどうすればよいのか?答えはHPVワクチンです。これは性交渉を持つ前の小学生~高校生までの間に行うことで最も効果を発揮します。
その他、食道がん…飲酒、中咽頭がん…HPV、上咽頭がん…EBウィルス、喉頭がん…喫煙、など挙げればキリがないくらいありますが、長くなりすぎたのでいったんこのあたりで終了したいと思います。
ただ一つだけ。ここまで見て頂いた方にとって驚かれたかもしれませんが、実は癌は『感染症による慢性炎症』が原因として非常に多いです。正しい知識を身に着けて皆さんが疾患の予防、もしくは早期発見早期治療へと気持ちが向かって頂ければ私としては幸いです。
膨らんだ話になりましたが、『死因統計から見た生活習慣病治療の必要性』→『がんとの闘い』は以上といたします。