前項では造血の流れや貧血の原因についてお話しました。
本項では、『男性や閉経後の女性』において出血性貧血を疑う場合、なぜ悪性腫瘍を疑うのかをお話ししたいと思います。
(3)管腔臓器と充実臓器
まず人間の内臓は① 管腔臓器 ② 実質臓器 の2種類に分類できます。
管腔臓器とは文字通り穴が開いている臓器です。実質臓器は逆に穴が開いていない詰まっている臓器です。
①管腔臓器の例:胃、大腸、小腸 etc
②実質臓器の例:肝臓、腎臓、膵臓、脾臓 etc
(4)自覚症状のない貧血=管腔臓器の出血の可能性
管腔臓器、特に胃腸で出血した場合、血液はそのまま胃腸をすり抜けて肛門から出ていきます。血便や黒色便が見られることがありますが、自分の便の色を日々観察している方は多くありません。そのため自覚症状なく出血が続くことになり、結果検診等で初めて貧血が見つかる方が多くいらっしゃいます。
逆に実質臓器で出血した場合、血液の逃げ場がありませんので臓器の被膜に圧力がかかり続けます。この被膜に痛覚繊維が存在するため『痛い』わけです。
そのため『特に症状がない方の貧血』を見た場合、胃腸からの出血を真っ先に疑います。
(5) 胃腸の出血の原因
胃腸の出血の原因は様々です。両性のものでは胃潰瘍や十二指腸潰瘍、マロリーワイス症候群、潰瘍性大腸炎、虚血性腸炎等があります。しかしこれらは全て痛みを伴うことが多いです。対して胃癌や大腸癌は進行するまでは痛みは全くありません。
そのため自覚症状のない出血性貧血をみた場合、『胃癌、大腸癌をまず疑うべき』というわけです。
※ちなみに女性の場合は子宮がんもここに加わりますが、大腸癌や胃癌による少量の血便や黒色便と異なり、不正出血は自覚症状として気づきやすいので少し異なるものとして扱います。
以上、男性や閉経後の女性の自覚症状のない貧血を見た場合は胃癌/大腸癌を疑うべき、という内容でお話しさせて頂きました。貧血のテーマの最後として次のブログで私の経験症例を提示いたします。