中大血管の動脈硬化の具体例としてまずは糖尿病性足壊疽から説明します。
(1) 糖尿病性足壊疽とは
皆さん糖尿病の合併症のイメージとして一番最初に思いつくのが、この『糖尿病性足壊疽』ではないかと思います。足が壊疽することによって最悪の場合、足指の切断や足首以下の切断,膝以下の切断,膝上の切断,最悪の場合足の付け根からの切断となってしまうこともあります。前項で足壊疽の原因は下肢動脈の詰まりだと私は申しました。そしてその原因は動脈硬化であり、動脈硬化は高血圧,脂質異常症,加齢でも起こるものだとも言いました。しかし単なる高血圧や脂質異常症だけで足壊疽に至る人はめったに聞いたことがないと思います。
ではなぜ足壊疽は糖尿病で特に多いのでしょうか?それは『糖尿病性神経症とのコラボ』で説明できます。
(2) 糖尿病性足壊疽が起こるまでの流れ
ここからは糖尿病性足壊疽が起こる原因を5つのステップで説明します。
【STEP1 糖尿病性神経症による足の知覚鈍麻】
先述の通り糖尿病性神経症はまず足の神経からスタートします。これによりひどい場合は足の痛覚神経が全く機能しなくなります。
【STEP2 足のけが】(重要!!)
足の痛覚神経が機能しないため、足の裏を怪我しても全く気付かないことがあります。私の経験した例ですが、足の裏に画鋲や釘が刺さっていても全く気付かずに過ごしている方もいました。恐ろしいですよね。。
【STEP3 細菌の侵入→壊死性筋膜炎】
足を怪我しても気付かずに生活しているため皮膚のバリアは機能せず、細菌が傷口から体の中に侵入し放題になります。その結果壊死性筋膜炎というとても危険な感染症を引き起こします。
【STEP4 動脈硬化→免疫や抗菌薬が届かない】
細菌が侵入した場合、血管を通って免疫細胞が患部に届き敵を倒します。しかし下肢動脈の動脈硬化のため免疫細胞が届かなくなります。また抗菌薬を注射しても血管が詰まっているため薬が足先に届かなくなります。
【STEP5 感染の進行→敗血症→下肢切断】
細菌を倒せないため感染はどんどん広がり敗血症となります。意識障害や急性腎不全が起こり死に至るため、救命のためには菓子切断が必要になります。
以上が糖尿病性足壊疽の流れになります。特にSTEP1-2は糖尿病患者さん以外ではほぼあり得ない状態です。同じ動脈硬化疾患といえども高血圧や脂質異常症では足壊疽はほぼ起こらないものの糖尿病ではよくみられる理由は、『糖尿病性神経症との合わせ技』が答えになります。
(3) 糖尿病性足壊疽を防ぐためには(重要!!)
とにかく『足の裏を毎日観察する』ことが重要です(これをフットケアと呼びます)。糖尿病患者さんは痛覚神経の異常から普通では信じられないような足の大けがをしても平気で過ごしている方が多くみられます。足の裏は特にけがをしやすく、かつ気にしなければ普段全く見ない場所でもあるため毎日しっかり観察することが肝要です。そして怪我があれば速やかに医療機関を受診しましょう。足壊疽は一度発症すると高確率で切断になるためぜひ参考にしていただければと思います。
以上で糖尿病性足壊疽については終了いたします。次は心筋梗塞のお話をしたいと思います。