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11/18(木) 田辺三菱製薬 社内研修会にて講師として参加

2022.11.21

皆さんお久しぶりです。また悪い癖でしばらくブログをさぼっておりました。これからまた怒涛のように更新していきたいと思っております。

 

さてこの度2022年11月18日田辺三菱製薬より社内講習会に講師として招いて頂きました。同社は腎性貧血治療薬として『バフセオ』という内服薬を処方されており、このお薬は現在医療界特に腎臓内科界隈で大注目となっております。

実はあまり知られていないのですが赤血球を造る指令は腎臓(エリスロポエチンと呼ばれる造血ホルモンを腎臓が分泌)が出しております。そのため腎臓がかなり悪くなるとエリスロポエチン分泌量が低下して貧血になります。これを『腎性貧血』と呼びます。

腎性貧血はかなり昔は治療薬などなく、輸血で凌ぐ他ありませんでした。それが1990年代にESA製剤という注射薬が出たことにより大きなパラダイムシフトを迎えました。そして今度は2019年にHIF-PH阻害薬(今回のバフセオもその一つ)という内服薬が開発されたため腎性貧血治療が20‐30年ぶりの大きな転換点を迎えております。

 

患者さんにとっては月に1回の注射よりは内服薬の方が喜ばれるはずなのでHIF-PH阻害薬は今後劇的にシェアが広がるのでは、と思われておりましたが、その思惑とは裏腹に世間ではあまり置き換えが行われていないのが現状です。それはなぜか?答えは『内科医の腎臓疾患への関心の低さ』にあります。慢性腎不全は数年‐数十年単位で進行する疾患です。現在透析人口の増加が大問題になっており非常に重要な社会問題なのですが(CMでも最近腎臓病の注意喚起が多くなっていますね。)、実際は慢性腎不全に対する医師の関心は正直全然高まっておりません。この原因は何でしょうか?これが今回の社内研修会のテーマでした。

 

答えは『慢性腎不全の進行の遅さ+内服薬が増える』ことにあります。慢性腎不全は非常に緩やかな進行を辿ります。医師と患者さんの付き合いは10年以上にわたります。しかし皆さん同じ医師の診察を10年以上受けることは非常に少ないのではと思います。なぜなら、医師が病院勤務医の場合約2-3年で転勤することが多いためです。また開業医の場合、比較的中高年での開業の医師が多くよく働いても20年,短い方ならば5年程度で健康不安で引退される方もいます。医師も人間です。『自分が診てる数年の間にそんなに問題にならない腎臓の勉強なんて後回し』の発想になってしまうのが現状です。また慢性腎不全の進行を食い止めるためにはたくさんの薬剤を追加する必要があります。そのため専門外の医師にとってはそこまで関心がない上に、薬剤増量で患者さんから嫌われる、という点でなおさら慢性腎不全なんて真正面から見たくなくなるのが実情だと思います。

 

私は腎臓内科なので、たとえ患者さんから嫌われようとも透析を回避するために当然しっかり診させていただきます。ただ今回伝えたいのは何かというと、『かかりつけ医として若い医師を選ぶことには良い点も多い』ということです。理由は上でも軽く述べていますね。医師も同じ人間です。50歳でも60歳でも大病を患い働くことができなくなることもありますし実際にそのような医師をこれまで沢山見てきました。その点若いかかりつけ医は患者さんを30年-40年診ることができる可能性があります。そうなると『自分が引退するまで専門外の内容は逃げ切る』なんて発想はおよそできなくなります。

 

なんとも言えない結論ですが私は若い医師として熱い志を忘れることなく、患者さんのために専門を問わず日々精進していきたいと思います。今後ともよろしくお願いします。

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