我が国において近年労働は明らかに苦しみのように捉えられています。FIRE(早期リタイア)等の言葉が流行っているのもその証左ですよね。
先述のようにこの現代の労働観は紀元前から中世までの考え方に近いものです。そこから中世~近代にかけてはプロテスタンティズムや社会主義思想のように、労働=喜びという考え方が主流であったはずです。なぜ現代日本において労働は再び苦しみに転じてしまったのでしょうか?こちらについて考察していこうと思います。
5⃣ 戦後日本=アイデンティティの確立が困難な時代
先のテーマでも述べましたが、封建制度の終焉に伴い人々にとって主君や国王等に代わる新たな心の拠り所が必要な時代に移りました。しかし実はこの世においてこれほど難しいことはなく、中世から近代にかけて人々は自分が何者なのか定義することができず苦しむことになります。その果てに一部の人々は逆に”資本主義がもたらした自由という苦しみ”からもう一度逃れることを自ら希望しました。彼らは封建主義時代のように自らを縛ってくれる強権政治の出現を望み、それに答えるように生まれたのがナチスドイツというわけです。しかし最終的にドイツ,日本は共に第二次世界大戦に敗北しました。その結果、再度世界に自由主義,資本主義の風が吹きすさぶことになりました。
そしてここからは戦後日本の話に移ります。敗戦後の日本はもちろん非常に貧しく苦しい時代でした。しかしそれでも戦前のような封建主義に近い思想が世の中であれば、貧困の最中でもなんとかアイデンティティを保つことが可能であったかもしれません。しかし戦後からアメリカの自由主義思想が移植されたことによりさらにアイデンティティの確立が困難な時代に突入しました。
しかしその後我々の両親/祖父母世代の方々の努力により、日本は一気に経済成長をしていき現代を迎えています。戦後の苦難の時代を支えた新しい”日本人の拠り所”とは一体何だったのでしょうか?私の中で一つの答えがあります。
この続きは次項に移りたいと思います。引き続きよろしくお願いします。