”人間の医師”の日常臨床 ~鑑別診断と除外診断の重要性 Part7~ 胸痛を例に
- 2024年4月26日
- お知らせ
OPQRSTを踏まえて今回の症例に立ち戻りましょう。まず例のごとく鑑別診断を挙げます。
【臓器別】
(ⅰ) 心臓:狭心症、心筋梗塞、心膜炎、不整脈 etc
(ⅱ) 肺:肺がん、肺気胸、肺塞栓 etc
(ⅲ) 胸膜:胸膜炎、癌の胸膜転移 etc
(ⅳ) 食道:逆流性食道炎、特発性食道破裂 etc
(ⅴ) 大動脈:大動脈瘤破裂/切迫破裂、大動脈解離
(ⅵ) 精神:心因性
今回の患者さんは当院に実際に来られた方の例であります。『1週間前からの胸痛』とのことですがOPQRSTを用いてさらに問診を深めていきます。
・Onset:じわじわと1週間前から
・Palliative&Provoke:寝転んだ時にひどくなる
・Quality&Quantity:胸がじりじりとする
・Region:左胸の首からみぞおちにかけて
・Symptoms:咳がでる
・Time course:数秒で胸の違和感は治まる
さてこれはPart5で示した鑑別診断の症状の中のどれにあたるでしょうか?答えは『逆流性食道炎』ですね。つまり症状は胸焼けであったわけです。今回は問診だけで診断しうる症例でした。
もちろん胸部レントゲンや心電図,血液検査は行っても良いのですが、それらの検査で異常が出ても決して診断を惑わされてはいけません。医師は検査を操る者であるべきであり、検査結果に医師が操られてはなりません。あくまで検査異常よりも自身の問診での診断を優先する、その揺るぎない自信,問診力が医師にとって最も重要です。