胸部不快感の代表疾患③ 逆流性食道炎 ~前編~|桜ヶ丘クリニック|兵庫県伊丹市の総合内科・腎/高血圧内科

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胸部不快感の代表疾患③ 逆流性食道炎 ~前編~|桜ヶ丘クリニック|兵庫県伊丹市の総合内科・腎/高血圧内科

胸部不快感の代表疾患③ 逆流性食道炎 ~前編~

ここまで胸部不快感だけで擦り続けて非常に長いお話になりました。纏まらない内容で申し訳ありません。

今回、最後に胸部不快感の代表疾患である『逆流性食道炎』についてお話したいと思います。

実は逆流性食道炎は10人に1人以上が持っているものであり、胸部不快感の原因としてこれが最も多い疾患となります。しかもこれは老若男女問わず発症するため若い方でも無縁ではないどころか、最近は若い方の発症が増えています。それは以下で説明していきますね。ちなみに私も3年以上これに悩まされています(泣)。

 

(1)逆流性食道炎とは

強酸性である胃液が食道に逆流することで、胸やけ、げっぷ、長く続く咳、口の苦み、喉の痛み等の症状が出るものを指します。症状の幅が広いためすごく見落とされやすいことが特徴です。

上の症状が出た場合、患者さん方は胸やけ→循環器内科、長く続く咳→呼吸器内科、口の苦み→歯科や耳鼻科、喉の痛み→耳鼻科等を受診されることが多いです。特に長く続く咳(慢性咳嗽)は喘息と誤診され治療されているケースをよく見ます。これぞ総合内科的な診断力が求められる疾患ですね。

 

(2)特徴的な症状

上記の症状の通りですが、『朝方や就寝前に寝ている時に胸やけや咳がでる』ことが多いのが特徴です。この点が一番狭心症と異なる点ですね。なぜ寝ている時に起こりやすいのか?それは胃と食道の位置関係にあります。重力の関係で起き上がっている時は胃液が胃から食道に戻りにくいですが、寝転ぶと胃と食道の上下関係がなくなるため逆流しやすくなるわけです。

 

(3)逆流性食道炎がなぜ起こるのか?

理由は主に以下の2つです。

① 下部食道括約筋の緩み

食道と胃の間には下部食道括約筋という筋肉があります。食後に胃液が出ている場合、この筋肉が締まることで逆流を防ぎます。しかし、加齢や降圧薬の内服等が原因でこの筋肉が緩み、特に高齢者で逆流性食道炎を発症するケースが多くなっています。

② 胃液が強すぎる

下部食道括約筋がいくらしっかり働いても少量の胃液はやはり逆流してしまいます。最近は胃液が非常に強い方が増えているので、少量の胃液でもひどい症状がでる方が多いです。

なぜ胃液が強い方が増えているのか?答えはピロリ菌感染者の減少です。

ピロリ菌は強塩酸である胃液の攻撃から身を守るためアルカリを出して中和することで生きながらえています。日本はピロリ菌感染が非常に多い国で、特に60歳以上の方はピロリ菌感染が多いため従来は胃液自体がそんなに強くなく逆流性食道炎は少ない状況でした。

しかし最近の若い方においてピロリ菌感染が劇的に減少しています。それは胃癌を防ぐためには非常に良いことなのですが、こと逆流性食道炎の面では強い胃酸が戻りやすくなるのでひどくなることが多くなってきています。これが若者に逆流性食道炎が増えている理由です。

 

ここまでざっと逆流性食道炎の概要に関して説明していきました。では次のブログで診断の仕方、治療を考えていきますね。