本日は糖尿病三大合併症の一つ、糖尿病性神経症についてお話ししようと思います。
糖尿病罹患後に適切な治療を行っていなければどんどん合併症が進行していきます。特に一番最初に進むのが、この『糖尿病性神経症』になります。
(1) 糖尿病性神経症の症状
① 足先の神経障害
先述の通り糖尿病により末梢神経が障害されます。そして末梢神経の中でも最も障害されやすいのは『足先の神経』です。その理由は以下に説明します。
まず神経は脳からスタートして全身に分布します。血管も気管支も神経も含め、人間の組織は中枢が最も太く端にいけばいく程細くなるという大原則があります。では最も脳から遠い場所はどこでしょうか?答えは足先ですね。そのため足先の神経は非常に細く、糖尿病がみられた際にまず初めに障害される部分になります。
- 足の先がしびれたような不快な感じ(たいてい左右の両足に起こる)
- 足が冷える。または反対に熱くなり、寝るときに布団から足を出して寝る
- 手や足の感覚が鈍る。ただし、鈍っていることに自分では気付かないことが多い
- 足の裏に紙が貼りついているような感じや、皮膚に虫が這っているような感じがする
- 神経痛が起こる(坐骨神経痛、腕や手の神経痛、肋間神経痛など
これらが初期症状としてみられることが多いです。これは『糖尿病性足壊疽』ともつながるため非常に注意が必要です。糖尿病性足壊疽に関しては長くなるので別の項で述べますね。
② 痛覚神経の麻痺
やや①と被りますが痛覚神経が麻痺してしまうことも多くなります。「痛みが少なくなるならいいことでは?」と思われるでしょうが、痛みは体の危険信号です。これがうまく伝わらなければ危ない病気に気付けず、恐ろしい結果につながることがあります。
特に救急の世界で問題になるのが『無痛性心筋梗塞』です。
症状は嘔吐のみで胸の痛みが全くない患者さんが実は心筋梗塞であった、とか急性心不全で入院した患者さんの原因を探るために心臓の超音波を見ると全く身に覚えはないものの実は既に昔に2ヶ所心筋梗塞になった跡がある、等のことが糖尿病患者さんではよく見られるため注意が必要です。
③ 自律神経の鈍麻
糖尿病性神経症は自律神経も障害します。そのため立ち眩みが出たり、胃腸の働きが落ちることにより便秘や下痢の症状がみられることがよくあります。また体が自然に行っている心拍数の調節ができないため動悸が起こったりすることもあります。
(2) 糖尿病性神経症の治療
現在のところ有効な治療はほとんどありません。糖尿病の治療を行ったとしても既に進行した神経症は元に戻すことは難しいことが多いです。そのためとにかく糖尿病の早期発見を行い予防することが重要となります。
以上、今回は糖尿病性神経症に関してでした。次は糖尿病性網膜症についてお話ししたいと思いますので引き続きよろしくお願いします。