前回の続きです。
(3) プロテスタントにおける富の概念=資本主義の始まり
先述の通り、プロテスタントにおいて職業とは神が与えたものとされています。そのため職業を全うすることは神の世界を体現するのに貢献したということになり、それによる利益(哲学用語で利潤)は神様からのプレゼントであり享受して良いとの考え方につながりました。ここで初めて『富=神に捧げるもの(カトリック)』→『富=個人が所有してよいもの(プロテスタント)』に切り替わったわけです。すなわちこのプロテスタントのカトリック教会に対する戦い(歴史では宗教戦争と呼ばれています)こそが世界が封建主義から資本主義へと進む重要な転換点であったわけです。カトリック時代の中世を支配していた封建主義的思想からの解放は人々にとって非常に喜ばしいことであり、瞬く間にプロテスタントは世界に広がっていきました。
※ちなみにprotestant(プロテスタント)とは抗議する者という意味です。
つまりカトリックにおける『労働=苦しみ,原罪』とは異なり、プロテスタンティズムにおいては『職業=神の与えた宿命』であり労働に対してかなり前向きに捉える傾向がでてきたと考えられます。プロテスタントの考え方を引用すると”転職を繰り返す=救われない側”ということになるので、ちょっと現代にはそぐわない思想ではありますね(汗)。ただ人々を封建主義から解放し近現代の資本主義の地盤を築く役割を果たしたという点においては、プロテスタンティズムは歴史的にとても偉大なものであったと私は感じております。
ここまで大丈夫でしょうか?およそ診療所のブログとは思えないものになってきているかもしれませんね(汗)。ただ医学は単に体を治療するだけではなく、人の幸福を追求する学問でもあると私は思っています(特に心療内科)。最終的にはそこに繋げていくつもりなのでもう少しお付き合いください。
この流れからして察しの良い方は既に気付いているかもしれませんが、次のテーマは『社会主義における労働の考え方』です。